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ワーク・ライフの傾向と対策 vol.82

キャリア理論としての「トランジション」(1)

以前のコラムで紹介したように、私たちキャリアコンサルタントは職業の選択や職業能力の開発・向上に関する相談に応じ、アドバイスを行っています。

当たり前のことですが、私たちが相談者さんの悩みに寄り添い、その人に適したアプローチを検討する際は、その場の思いつきであれこれ言うわけではありません。人材業界における長年の経験や知識に加え、「キャリア理論」をベースにしてコンサルティングを行います。

このキャリア理論とは何かといえば、キャリアの発達・選択に関する現象をモデル化した知識体系のこと。統一された理論があるわけではなく、何人もの理論家・研究者がそれぞれの考えを展開しています。

キャリア理論は何もキャリアコンサルタントのものだけではありません。誰にとっても、自分のキャリアを考える際の道しるべとなってくれるでしょう。

複数のキャリア理論家の考えに登場するキーワードが「トランジション」です。
これは転機、移行、変わり目といった意味で、人生に大きな変化をもたらすような出来事(就職、転職、結婚、離婚、親の死など)において、ある段階から次の段階への過渡期と捉えると分かりやすいです。

具体的にどんな理論があるのか、少し紹介しましょう。


【シュロスバーグの理論】

全米キャリア開発協会の会長を務めたこともあるN.K.シュロスバーグ氏は、人生はトランジション(転機)の連続であるとしています。
シュロスバーグ氏が考える転機は3種類。すなわち、結婚、定年など「予測していた転機」、倒産による失業、不慮の事故など「予測していなかった転機」、そして昇進しなかったなど「予測していたものが起こらなかった転機」です。

シュロスバーグ氏は、下記の4つのリソースを点検し、強化することがキャリア・ディベロップメントの上で重要としています。

・状態(Situation):そのような状況が起きた原因は何か?
・自己(Self):自分はどのようにその変化に対処しているのか?
・支援(Support):その転機への対処にどのような資源が活用できるのか?
・戦略(Strategy):状況を変える戦略を具体的にどう実行しているのか?

これはそれぞれの頭文字を取って「4Sモデル」と呼ばれます。


【ブリッジズの理論】

米国の人材系コンサルタント、W.ブリッジズ氏は、トランジションには「何かが終わる」「ニュートラルゾーン」「何かが始まる」の3段階があると述べています。

・第1段階の「何かが終わる」際には、さまざまな喪失感が伴います。
・第2段階の「ニュートラルゾーン」は、喪失感を受け止め、次の段階に進むには何が必要かを見つける時期です。
・第3段階の「何かが始まる」では、他者との対話などを通じて目標に向けたプロセスが始まります。

ブリッジズ理論によれば、終わりが新しい始まりのスタートであり、それまでの状態をきちんと「終わらせる」ことが重要です。
転職についても、今の会社にいたほうがいいのか、新たな活躍の場を求めたほうがいいのか、心が揺れますよね。これをニュートラル期間を経てきちんと終わらせなければ、新しい一歩は踏み出せません。

次回に続けます。 一覧に戻る >

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