ワーク・ライフの傾向と対策 vol.66
日本の産業は、第一次産業、第二次産業、第三次産業の3つからなります。
というと、社会科の授業を思い出すという方が多いかもしれませんね。
これらの産業のうち、近年、目に見えないサービスや情報などの生産を行う第三次産業が、「サービス産業」として注目を集めています。
日本の屋台骨となる産業が何かと言えば、製造業を思い浮かべる方が多いかもしれません。確かに第二次産業に属する製造業は、“ものづくり産業”として、日本の経済成長を長く支えてきました。ところが意外なことに、製造業が日本経済全体に占める割合は、売上、利益、雇用者数などいずれも2割程度にすぎないのです。
実は、国内総生産の7割近くを占めるのは、サービス産業なのです。
サービス産業とひとくくりにしても、金融、保険、卸売り、小売、サービス業、情報通信業などさまざまな業種があり、その裾野は広く、私たちの日々の生活を支えていると 言っても過言ではありません。
これらのサービス産業は、少子高齢化が進んだり、家計消費に占めるサービス分野の支出が増大したり、あるいはアウトソーシングの拡大など製造業が変化してきたことなどから、今後さらに市場が拡大すると見込まれています。
ところが、です。
サービス産業の役割が拡大する一方で、実はその労働生産性(=働き手1人が生み出す付加価値額)は、欧米諸国のサービス産業と比べて大きく後れをとっている現状があります。
日本生産性本部が2016年12月に発表した調査結果によれば「日本のサービス産業の労働生産性はアメリカの約半分」との衝撃的な事実が明らかになっています。業種別の内訳を見ると、特に格差が大きいのが「運輸」「卸売・小売業」「飲食宿泊」で、アメリカの生産性を100とした場合、それぞれ44.3%、38.4%、34.0%にとどまっています。
サービス産業は、製造業と比べると、「目に見えない(かたちがない)ものが多い」「市場が若く、中小企業が多い」「お客様の要求はさまざまで、それぞれにサービスの内容をあわせていく必要がある」などの特徴があり、こうしたことがこれまで生産性の向上を妨げてきたと考えられます。
しかし、これは逆に考えると、経営革新によって生産性を飛躍的に向上させる余地が非常に大きい、ということになります。
このことを「転職」につなげて考えると、異分野でキャリアを積んできた人材が、そこで培ったノウハウや知識をサービス産業にスライドして応用すれば、生産性向上に貢献できる可能性もあるわけです。ざっくり言えば、製造業でマーケティングの経験がある方が、宿泊業で収益が上がる新サービスの開発に手腕を発揮する、というようなイメージです。
サービス産業は、地方創生、雇用問題、観光振興などとも密接に関係するため、国も力をいれており、昨年末には平成29年度中にサービス産業向けの労働生産性向上マニュアル策定に着手する、との報道がありました。
ユネスコの無形文化遺産に登録されたことから注目を集める“和食”のフードサービス、日本のおもてなし文化を体現する宿泊、インバウンドで人気が高い日本の美容・リラクゼーションなどは、東京オリンピックの機運にも乗って、今後特に市場が拡大していくと考えられます。
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