ワーク・ライフの傾向と対策 vol.59
2016年12月、政府は「働き方改革」の一環として副業を後押しする方針を発表しました。
発表後はメディアで、一つのビジネスに依存せず、複数のビジネスを並行して行うことを意味する「パラレルキャリア」という言葉を耳にするようになりました。日本語で「~と並行した」という意味の「パラレル」(parallel)と、「職務経歴」を意味する「キャリア」(career)を合わせた造語です。
パラレルキャリアという考え方を最初に提唱したのは、かの有名な経営学者のピーター・ドラッカーです。ドラッカーは著書で、人の寿命が延びた現代では、個人は一つの組織に依存し同じ仕事を続けるだけではなく、もうひとつの別のキャリア、すなわちパラレルキャリアに時間と労力を費やすべきだと述べています。ボランティアや地域の自治活動といった社会活動に取り組むことで、本業に良い影響を与える可能性が期待できるとも説明しています。
近年、そのパラレルキャリアが広がりを見せています。日本有数の人材紹介会社集合サイト「ミドルの転職」が、35歳以上を対象に実施したアンケートによると、対象者の約60%が「パラレルキャリアを実践したい」と回答。なんと「すでに実践している」という回答が約30%に及びましたほとんどの方が「知見・視野を広げ、人間関係の構築につながる」という理由で実践しており、そのうち約70%が本業に役に立ったと回答しています。
2017年3月には経済産業省がパラレルキャリアの実例を取りまとめた「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業 研究会提言~パラレルキャリア・ジャパンを目指して~」を公表しました。紹介された実例は、従業員として勤務しながら起業する方やNPO法人の社会活動へ参加する方など、スタイルは様々。20代からパラレルキャリアを実践している方や5つ以上のキャリアを並行している方も紹介されていて、幅広い年代の方が数や業種に制限なくチャレンジしていることがわかります。
パラレルキャリアを支援するサイトやセミナーも増えています。中にはサイトの紹介がきっかけで、都市圏で勤務しながら地方のNPO法人へ所属し、住居を2拠点構えて活動している方もいるそうです。本業よりも熱が高まり、地方のNPO法人にUターン転職するケースまでみられるとか。
今後はパラレルキャリアの考え方が主流の時代がやってくるかもしれません。平日は都市圏、週末は地方で仕事をする生活が当たり前になる可能性もあります。
人脈を築き、視野を広げて本業を客観視する機会を設けることは、ライフ・ワークを考える際にとても大切なことです。私たちも副業を認定している企業や営業所のある地域のNPO法人の情報なども集めていますので、お気軽にご相談ください。
【参考HP】
「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業 研究会提言~パラレルキャリア・ジャパンを目指して~」(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170531005/20170531005.html
パラレルキャリア支援サイト「もんじゅ」
http://monju.in/
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