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ワーク・ライフの傾向と対策 vol.118

「幸せ」と「年収」のバランス

「幸せ」と「年収」のバランス

先日も「年収の相場のようなものがあれば教えてほしい」という質問をいただきましたが、年収は転職にあたっての最大の関心事であることは間違いありません。

だいぶ前に本コラムで紹介しましたが、ダニエル・カーネマン氏らアメリカの著名な研究者が2010年に発表した論文で、「年収に比例して人々の幸福感は上がるものの、年収が7万5,000ドル(現在の日本円で約850万円)を超えると幸福の感じ方が鈍くなる」と指摘されています。

人間の幸福感は、お金だけでなく、健康、余暇、人間関係、将来に夢が持てるかどうかなど、さまざまな要素が絡み合って決まります。もっとお金が欲しいと望むあまり、健康を損なうほど働いたり、家族を顧みなくなったりということがあれば、幸福度はおのずと低下していく―ということは想像に難くありません。

カーネマン氏らの研究では幸福度のピークは年収7万5000ドルということでしたが、この額は国や住んでいる地域によって異なります。
日本ではどうでしょうか。

内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」によると、世帯年収別(「~100万円」「100~300万円」「300~500万円」「500~700万円」「700~1000万円」「1000~2000万円」「2000~3000万円」 「3000~5000万円」「5000~1億円」「1億円~」)の総合主観満足度は、年収が増えるにつれゆるやかに上がっていきます。特に、年収300 万円を超えると満足度が大きく上昇します。日本人の人口でいえば年収「300~500 万円」の層が多いので、納得できますね。

一方、満足度は「2000~3000万円」をピークに、それ以上になるとゆっくりと低下します。「1億円~」の最富裕層の満足度はさぞ高いだろうと思いきや、世帯年収を10段階に分けた中で下から5番目です。やはり、年収と幸福度は比例しているわけではないようです。

さて、同調査で注目すべきは、年収が「 300 万円未満」の人と「1,000 万円以上」の人に分けて、「仕事のやりがい」および「子育ての楽しさ」と総合主観満足度との関係を深掘りしている点です。

結果はずばり、年収の多寡にかかわらず、仕事のやりがいが高い場合は満足度が高く、仕事のやりがいが低い場合は満足度は低くなっています。
しかも年収が 「300 万円未満」の人で仕事にやりがいを感じている人と、 年収が「1000 万円以上」で仕事にやりがいを感じていない人を比べると、前者のほうが満足度が高いのです。

子育ての楽しさについても同様の結果で、満足度は子育てを楽しんでいる場合に高く、楽しんでいない場合には低いという結果となっています。

年収1000 万円はキラキラした、魅力的な数字です。ですが、それだけでは幸せにはなれません。
年収の額はそこに満たなくても、仕事にやりがいを感じ、子育てを楽しんだほうが、ずっと幸せになれるのです。

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