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キャリアコンサルタントに聞く vol.88

働くことを通じて「幸せ」が感じられません

Q:働くことを通じて「幸せ」が感じられません

生産管理に携わっています。入社10年の節目を経て、今の仕事が嫌だということはないのですが、逆に充実感や働く幸せを感じているかといえば、そうではない自分がいます。心機一転、転職もありなのかなとも考えています。


A:自ら動いて「成長実感」を得よう。

ご質問ありがとうございます。
ご質問者さんと同じように感じていらっしゃる方は、意外と多いのかもしれません。

パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」では、世界18ヵ国・地域の主要都市の人々が、働くこと通じてどれほど「はたらく幸せ実感」と「はたらく不幸せ実感」を主観的に感じているかを調査しています。

結果を見ると、日本で「幸せを感じている」という就業者は49.1%と18ヵ国・地域中最下位です。一方で「不幸せを感じている」という人は、18.4%(15位)と良好な結果でした。
日本は、働くことを通じて幸福感を感じている就業者は少数だけれど、かといって不幸感を感じている就業者もそれほどいないという傾向です。

いずれにせよ、日本人の「はたらく幸せ実感」が低いのは、これはちょっと悲しい結果ですね。
同研究所では、この現状の要因として以下の6つを上げています。

(1)40代以下の「はたらく幸せ実感」が低く「はたらく不幸せ実感」が高い

日本は、20~40代の「はたらく幸せ実感」が50代以上と比較して低い傾向です。これは若年層の抜擢人事が少ないことが一因と考えられます。

(2)「権威主義・責任回避」の組織文化が強い

日本では「上層部の決定に従う」「社内では波風を立てないことが重要」など、「はたらく幸せ実感」とマイナスに関連している「権威主義・責任回避」の組織文化の傾向が強くなっています。

(3)「はたらく幸せ実感」とは無関連の「賃金重視」の価値観が強い

日本では、「はたらく幸せ実感」との相関がほとんどみられない「良い生活をするのに十分な賃金を稼ぐ」という労働価値観を重視する傾向が強いです。
なお「はたらく幸せ実感」との関連が強いのは、「持てる力を出し切る」「同僚の役に立つ」「社会の人々を助ける」といった労働価値観です。

(4)就業者の寛容性が低い

「自分とは考え方や好み、やり方が違う人とも積極的に関わる」など、寛容性が高い国・地域ほど、「はたらく幸せ実感」が高く、「はたらく不幸せ実感」が低い傾向が見られました。日本の就業者の寛容性は、18ヵ国・地域の中で香港に次いで2番目に低くなっています。

(5)業務外の学習・自己啓発の実施率が最も低く成長実感が低い

仕事で成長を実感できるかどうかは「はたらく幸せ実感」に密接に関わっています。しかし、日本では業務外の学習・自己啓発を「とくに何も行っていない」就業者が52.6%と、18ヵ国・地域中最も高くなっています。また成長実感度も最も低いレベルです。

(6)労働時間が男性に偏り、男性の「はたらく幸せ実感」が低い

日本は、女性に比べ男性の「はたらく幸せ実感」が低く、男女差は7ポイントと18ヵ国・地域中で最もギャップが大きいです。これは、日本の週当たり平均勤務時間の男女間の差が18ヵ国・地域中最も大きい(女性のほうが勤務時間が短い)ということと関連しています。

いかがでしょうか。
日本の「はたらく幸せ実感」が低い背景には、 雇用慣行や組織文化、価値観が影響しています。こうした環境が変わることを期待するのは難しいですが、個人レベルでできることもあります。そのひとつは自己成長に向けた投資です。
質問者さんも、転職を検討する前に、まずは現職でご自身がどうスキルアップしていけるか考えてみると良いのではないでしょうか。

国が企業で働く人のリスキリングから転職までを後押しする制度も始まります。今年6月、経済産業省が、企業で働く人を対象に、転職を目的とした学び直しを支援する新たな制度を発表しました。プログラミング講座などの受講費用の一部を国が補助するもので、近く制度の詳細が発表されるそうです。こうした助成施策を活用しながら、「はたらく幸せ実感」に一歩ずつ近づいていきましょう。


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