キャリアコンサルタントに聞く vol.35
Q:キャリアダウンの転職、どんな気持ちで取り組めばいいでしょうか。
新卒で就職して以来、仕事優先の生活を送ってきました。仕事自体は面白く、手ごたえもあり、営業としてそれなりの実績を出してきたとの自負もあります。インセンティブが充実しているので、年収も同世代に比べて高いと思います。
しかし、この度子どもが生まれたことで、転勤がつきもので、休みの日も顧客から電話があるような仕事をこのまま続けていていいのだろうかと疑問に思うようになりました。妻からも「もう少し家にいて欲しい」と言われています。
ただ私としては、キャリアダウンすると分かっている後ろ向きの転職をするのは少し悔しい気もありますし、そうした考えで転職することは先方にも失礼ではないかと思っています。アドバイスいただければ幸いです。
A:積極的な「ダウンシフト」は、すてきな選択肢です。
ご質問、ありがとうございます。
ここ数年、仕事とプライベートを調和させること、すなわちワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方が見直されており、フレックスタイム制度や時短制度といった柔軟な勤務体系を用意したり、ノー残業デーを設けて長時間労働を減らしたりと、企業もさまざまな取り組みをしています。
質問者さんのように、やりがいのある仕事に打ち込む時期や環境があったことは、ある意味、非常に幸せなことだと思います。
しかし人生のライフステージは多様です。仕事に没頭するのではなく、ワーク・ライフの「ライフ」を大切にすべき時期もあります。質問者さんは今、そのステージにあるのだと思います。
キャリアコンサルタントとしては、キャリアダウンにつながる転職だと分かっていて転職するのは少し悔しいというお気持ち、よく分かります。もったいないですよね。
確かに転職を希望する方は、年収や役職が上がる「キャリアアップ」を目指すケースが多いですから、その逆を行くときには勇気も必要ですし、発想を切り替える必要もあります。
仕事とプライベートの調和を考える上で、「ダウンシフト」「ダウンシフティング」という考え方があります。低速ギアに切り換えるという意味の言葉で、その通り「生活を減速すること」を指します。仕事や金銭的なことを追求するのではなく、家族との時間を増やしたり、趣味を楽しんだりと、自分を優先させた豊かな生き方だと言えるでしょう。
質問者さんはこうしたダウンシフトの視点から積極的にキャリアダウンを選ぶのですから、自信を持っていただいていいと思います。
ただし年収がダウンすることは現実として避けられません。暮らし全般を見直し、必要な生活費を下げる工夫が欠かせません。可能であれば、郊外に引っ越したり、地方に移住したりという手段もあります。また、子育てがひと段落すれば、夫婦共働きで収入を上げることもできます。
後向きの気持ちで転職活動に臨むことが、転職先企業に対して失礼ではないかと思われるという点に、質問者さんの誠実で真っ直ぐなお人柄が表れていると思います。そうした人材を求めている企業はたくさんあります。ぜひ私たちにご相談ください。
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